印刷方式OLED TVパネル量産後に期待されるコストとは?
DSCC田村喜男の視点
当社の Quarterly AMOLED Materials Report は、モバイル用とTV用のOLEDパネルを対象に、EMLとCommon材料のサプライチェーン、材料別・材料メーカー別に2024年までの市場規模の見通しを提供している。材料需要の予測は、需給バランス見通しからパネル数量・面積需要を算出、材料需要へ置き換える理想的なメソドロジーを採用している。そして、パネル各社の投資計画・生産能力の見通しも詳細に加味して、パネルメーカー別の材料需要見通しも収録している。パネル1枚当たりの材料スタックコスト分析もボトムアップ・トップダウン双方から分析している。この調査レポートの最新号に基づく今週のグローバル版ブログ (AMOLED Materials Market Will Grow to $2.1 Billion by 2024) を受けて、私からはコスト分析面からの補足解説を行いたい。
2020年6月にJOLEDが、中国TCL Tech傘下のディスプレイメーカーであるChina Starと資本業務提携契約を締結、独自の印刷方式OLED製造技術を活用し、TCL CSOTとOLED TVパネルの共同開発を開始すると発表した。これにより、ようやく印刷方式OLED TVラインの投資計画が見えてきたと言えよう。
今後2021年には印刷方式OLEDの具体的な投資計画を決定、製造装置発注、発注後1年程度で搬入開始、その後1年以内に量産開始のスケジュールとなりそうだ。言い換えると、2021年投資決定、22年装置搬入、23年量産開始、24年フル生産、ということになる。対象ラインは8.5世代が想定され、複数のラインにより月産基板投入60Kシートレベルの工場が見込まれる。これにより、中国ディスプレイメーカーもTV用ライン投資をLCDからOLEDへ軸足を移すことになる。中国BOEはOLED TV用パネル技術として、まずはWOLEDを採用する見込みであるが、次のステップとして印刷方式OLEDも視野に入れているであろう。
印刷方式OLEDパネルの量産開始は、2023年から24年が想定される。生産技術が確立され、生産歩留まりが向上・安定化してくる2026年を対象に、期待される材料コストとパネルコストの見通しを以下に解説する。
図表の通り、材料スタックのコストは、印刷方式でWOLEDの半分程度が目標となっている。この場合、印刷方式パネルコストはWOLED $301に対して10%割安の$268となっている。印刷方式の場合は投資コストの負担が大きく、減価償却費がWOLEDより割高となる。China Starが製造装置に8年償却を採用する場合には、$99の減価償却費が$62まで低減され、パネル総コストは$231となり、WOLEDに対して20%強低減されることになる。一方、バックライトを含むLCDパネル総コストは$113であり、印刷方式OLEDパネルコストは製造装置8年償却採用の$231で、ようやくLCDコストの2倍程度となる。
対LCDという点を考慮すると、中国ではやはり印刷方式によるコストダウンがOLED TVパネル投資継続の重要な条件となっていくかもしれない。
本記事の出典調査レポート
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