シャープのディスプレイ事業再編を読む~JDI白山工場買収を受けて

Published August 28, 2020
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DSCC田村喜男の視点

シャープは8月28日、JDI白山工場の土地、建物および付帯設備等の資産を3億9,000万USDで取得したと発表した。
https://corporate.jp.sharp/ir/pdf/2020/200828-1.pdf

DSCCとしては、今回の白山工場買収は、既存のアップル向けLCD生産ラインの買収のみが目的ではなく、マイクロLEDなどの次世代自発光型ディスプレイへの投資 (アップルと共同?) がそれ以上の目的である、と捉えている。

白山工場LCDの生産能力は、稼働率80%、歩留まり85%程度とすると、6.1”換算で年産5,000万パネルに達する。パネル1枚当たりの利益率を5%程度とすると、1年あたり150億円の収益となり、3年で今回の買収額を回収可能となる。

さて、下図のシャープの生産ライン状況に関して解説したい。iPhone向けLCDは現在亀山第1工場 (第6世代のLTPS LCD) にて量産されているが、これをQ1'21から白山工場へ生産移管する見通し。この後、多気第4.5世代のLTPS LCD工場の月産30Kシート分は、亀山第1工場へ移管して、早晩閉鎖する可能性があるとDSCCでは捉えている。この移管により、亀山第1工場の月産5Kシート以上が対応していくことになる。車載用LCDは既にLTPS LCDのみの受注に絞っており、亀山第1工場にて2020年から生産を開始している。今後は車載用LCDを亀山第1工場のみで増産、車載用LCDで月産投入10Kシート以上を目指していく。以上、車載用LCDと多気第4.5世代のスマホ用LTPS LCD生産移管で亀山第1工場が充足されていく方向である。

以上、今回の白山工場LTPS LCD工場買収は、iPhone向けLCDの増量とフレキシブルOLED投資目的ではなく、マイクロLEDなど次世代自発光ディスプレイへの投資と既存LCD生産ラインの再編に基づくポジティブなアクションであったと言えよう。

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Written by

Yoshio Tamura

tamura@displaysupplychain.com