OLED生産とライン稼働率が2020年下半期に急増
DSCC田村喜男の視点
DSCCが四半期毎に発行する Quarterly OLED and Mobile LCD Fab Utilization Report は、全てのOLEDラインとスマートフォン向けLTPS LCDラインを対象に、月単位での基板投入能力・実際の基板投入、そしてそれらに基づくライン稼働率を枚数ベースと面積ベースで提供している。他では見られないDSCCならではのサービスとして、次四半期の月別、そして次々四半期の見通しまでを、各社計画とDSCC需要予測の双方を加味して予測している。特に次々四半期などは、DSCCのパネル需要予測に基づいた基板投入量予測を収録している点が、ディスプレイ産業関係者様にとって利用価値の高い分析情報となっている。
本稿では、今週のグローバルブログ OLED Utilization Ramps Up in 2H に対して、最新の月別動向の2020年12月までの状況を補足解説する。1つ目のチャートのように、最近のフレキシブルOLEDの基板投入能力は主に中国メーカーラインの増強により増加傾向が引き続く。一方、リジッドOLEDは主に中国EDOによる増加にとどまる。そして、LTPS LCDはもう増強はない状況となっているが、Q1’21からはSharpがJDIから買収した白山工場が加わる。
さて、2つ目・3つ目のチャートに示されている実際の基板投入量とライン稼働率推移であるが、フレキシブルOLEDの基板投入量が2020年下半期で急増しており、2019年の下半期より強い上昇を示している。2020年下半期のこの強い上昇は、Appleが2020年モデル全てにフレキシブルOLEDを採用したことが最大の要因となっている。実際に、Samsung Display (SDC) とLGDの基板投入量・生産ライン稼働率が急上昇し、SDCのフレキシブルOLEDラインとLGDのApple用フレキシブルOLEDラインは、2020年下半期で90%を超えるフル稼働の状況となっている。一方、BOEの2020年下半期における基板投入量は、同上半期と同等レベルを見込んでいる。BOEの基板投入能力は増加傾向なので、同下半期での生産ライン稼働率は同上半期より低迷してきている。BOEはHuawei向け生産が減少している。しかし、Apple向けの量産に成功すれば、Huawei向けの基板投入減少をある程度補えることになる。中国のVisionox、China Star、Tianmaなどの後続メーカーは2020年で量産軌道に乗ってきてはいるが、Q2’20から2020年下半期にかけての基板投入量はある程度の増加傾向にとどまっており、それらの生産ライン稼働率は2020年下期で40-60%台となっている。
リジッドOLEDとLTPS LCDの基板投入量、生産ライン稼働率は、2020年でLTPS LCDが優勢となっている。LTPS LCDは2020年上半期も下半期も安定した基板投入、世界平均80%前後の生産ライン稼働率を維持している。特に、Tianma、China Star、Sharpが、2020年で90%以上の高い生産ライン稼働率となっている。対して2020年のリジッドOLED生産ライン稼働率は、2019年平均75%より大きく低迷しており、2020年は世界全体でもSDCのみでも50-60%の状況が引き続いている。
リジッドOLEDが2020年で低迷している背景は、Samsung Galaxy及び中国大手スマートフォンブランド双方における大幅な需要減によるものである。Oppo/Vivo/XiaomiのリジッドOLEDは中国向けが多かったが、Q1’20-Q3’20でHuaweiにシェアを奪われた。そして、Samsung Galaxyは新興国向けリジッドOLEDが、Oppo/Vivo/Xiaomiにシェアを奪われてきている。このようなリジッドOLED需要の不振に対応して、6.5” FHDリジッドOLEDのローコストパネルで$17程度の見積を提示しているとの情報である。SDCが、リジッドOLEDで低価格戦略により生産ライン稼働率を高める戦略を取ることにより、リジッドOLED需要が2021年に回復することを筆者は期待する。
(10月9日 14:00版)
本記事の出典調査レポート
Quarterly OLED and Mobile LCD Fab Utilization Report
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