国内ガラス基板工場トラブルと韓国LCD工場閉鎖延期で変化する2021年LCD需給バランス
DSCC田村喜男の視点
DSCCの Quarterly Display Fab Utilization Report は、全てのLCDとOLED生産ラインを対象に、基板投入能力 (最新版では Q1'18-Q4'25)、実際の基板投入量 (Q1'18-Q4'20)、稼働率 (Q1'18-Q4'20) などの調査データを、パネルメーカー別・生産ライン別 (枚数・面積) に提供している。本レポートの強みの一つは、過去実績や当月見込みのみならず、向こう2四半期のライン別の見通しを、生産計画と需要見通しの両サイドからの思慮深い需給分析により予測している点である。
本稿では、上記レポートに基づく2021年のLCD需給バランス見通しを解説したい。先般ブログ「2021年のFPD市場展望」でも述べた通り、2020年下期ではTV用とIT用パネル需要の好調が続いており、この傾向は2021年上期も引き続きそうである。絶好調の米国TV需要がいつピークアウトして、どのような速度で減速していくかが注目点となる。同じく好調な世界IT需要のピークアウトのタイミングもなかなか読みにくい。DSCCでは、2021年のLCD基板投入を「上期偏重・下期緩和」型 (2020年の上期48%:下期52%に対して2021年は50%:50%) という想定にした。その結果、2020年下期の87-88%という高いLCD稼働率が2021年上期も引き続き、同年下期に87-85%台へと緩和していく見通しとなった。
しかし、国内大手ガラス基板メーカーの日本電気硝子 (NEG)・滋賀高月工場の5時間停電によるガラス窯の停止トラブル (12月10日) が、Q1’21のガラス基板供給に影響を与える可能性が出てきた (12月24日更新: Power Outage at NEG May Create Q1 Glass Shortage for Displays)。また、SDCの韓国 T8工場LCD生産ラインの閉鎖が、2021年3月からQ4’21まで延期される可能性も高まってきた。NEGのガラス窯トラブルはLCD需給バランスをさらにタイト化させる一方、SDCのライン閉鎖の延期は需給バランスのタイト感を緩和させることになる。この結果、Q1’21のLCDライン稼働率は90%まで上昇 (もともと87%の見込みであった)、言い換えると「ガラス基板不足」という状態に陥ることになる。Q2’21からは、稼働率がもともとの88-86%から2ポイント下振れ、86-84%の見通しとなった。
他にドライバーIC不足も話題となっており、2021年上期はそのタイト感が継続すると見込まれている。しかしQ1’21に関しては、ガラス基板不足がドライバーIC不足を上回る可能性が高い。著者の取材では、既に複数のパネルメーカーやCFメーカーで、ガラス基板の確保を懸念する声が聞こえ始めた。
最後にパネル価格について述べたい。Q1’21でのLCD需給バランス逼迫化の場合、TV用パネル価格は横ばい予想から、引き続き上昇する可能性が出てきた。ガラス基板価格も、据え置きか (その場合は2009年以来となる)、上昇が見込まれる。IT用パネル価格はもともと2021年上期も上昇予測であり、Q1’21の値上げ率に拍車をかけることになる。ただその後、LCD需給バランスはQ2’21から緩和し、TV用パネル価格も下落に転じていくと見込む。DSCCの12月3日から聴講可能な 2020 Display Market Outlook "Virtual" Conference では、下図のように、LCD TVパネル価格は2021年下期にかけて下落する見通しであったが、SDC韓国LCD工場の閉鎖延期による世界LCD生産能力の上振れが、この予測を後押しすることになりそうだ。
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