2021年のスマホ用パネル需要
第43回 DSCC田村のFPD直球解説 (電子デバイス産業新聞)
2021年のスマートフォン用パネル市場は、当初予測では前年比7%増を想定していたが、中国やインド市場の販売低迷などを受け、現時点では同5%増の15.3億枚になると予測している。米国による規制でHuaweiが大きく台数シェアを落とし、ハイエンド市場はAppleとSamsung、ミドル~ローエンド市場は中国メーカーがシェアを奪い合うという予測から現状は大きく外れていないが、そのなかで予想外といえる動きもいくつか見て取れるようになってきた。
台数で世界首位のSamsungは、2020年に比べて自社向けのフレキシブル&フォルダブル有機ELの所要量が減少しそうだ。これは、最も高付加価値なパネルであるフォルダブル有機ELの市場拡大を後押しするため、フォルダブル有機ELを搭載したモデルを複数商品化する代わりに、シリーズ展開してきたGalaxy Noteの新モデルを発売していないことが大きく影響していると考えている。
自社向けリジッド有機ELの所要量も減っている。自社向けよりも中国スマホメーカーへの外販が増えていることに加え、ノートPC向けの需要増やNintendo Switch向けの特需などがあることが要因だ。ただし、外販を優先したことによって、リジッド有機ELを生産するA2ラインはフル稼働が続いている。
こうしたSamsungの状況を受けて、Huaweiが失ったハイエンド市場でシェアを最も獲得できているのがAppleだ。モデルチェンジでiPhoneの2020年モデルすべてにフレキシブル有機ELを採用したことも加わり、2021年のApple向けフレキシブル有機ELは前年比56%増が見込まれる。
一方で、旧型iPhoneだけに限られる液晶の需要は同33%の減少が見込まれている。iPhone向け液晶では、ジャパンディスプレイから白山工場を取得したシャープがシェアを上げ、Appleへの液晶トップサプライヤーになった。
VOX (Vivo、Oppo、Xiaomi) は、いずれも2020年から大幅に出荷台数を増やす見込みだが、なかでもコストパフォーマンスの高さでシェアを拡大しているXiaomiが一歩抜け出てきそうな勢いにある。リジッド有機ELの採用を増やすと同時に、フレキシブル有機ELはCSOTやTianmaなどから調達を拡大している。最近はスマホに限らず、有機ELを搭載したテレビやノートPCも相次いで商品化しており、他社を引き離していきそうだ。
一方で、Huaweiからブランドを独立させたHonorは当初の計画から目算が狂っている。2021年のパネル需要は4000万枚強と予想されるが、これは9000万枚とも言われた当初計画の半分にも満たない。主対象の中国市場が不振であることに加え、部品調達にも苦戦しているようだ。
(本稿は、9月上旬「電子デバイス産業新聞」のDSCC連載記事を基に、10月4日に田村が再確認・一部改訂したものです)