FPD生産ライン稼働率がQ2’23に上昇~業界の回復が加速

Published May 8, 2023
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この記事は5月8日付 (米国時間) のグローバルコラム Display Industry Recovery Gaining Steam as Fab Utilization Increases in Q2’23 をDSCC Japanのスタッフが全文和訳したものです (5月12日 16:00版)。出典調査レポート Quarterly All Display Fab Utilization Report の詳細仕様・販売価格・一部実データ付き商品サンプル・WEBご試読は こちらから お問い合わせください。

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Q1’23に始まったFPD生産ライン稼働率の上昇傾向がQ2’23に入って加速している。DSCCが先週発行した Quarterly All Display Fab Utilization Report 最新版で明らかにしている。FPDサプライチェーン在庫は通常水準まで削減されており、再補充の波が需要増加につながっている。ただし、LCDメーカー各社によるQ2’23稼働率の大幅引き上げは、需要を上回ることでLCDの価格上昇が抑制されるリスクを伴っている。

FPDメーカー全社のTFT基板総投入量は2022年下半期の減少後、Q1’23には前期比2%増、前年比22%減の6900万㎡となった。現四半期であるQ2’23のTFT基板総投入量は前期比14%増、前年比4%減の7890万㎡になる見通しだ。Q3’23のTFT基板総投入量は前期比横ばい、前年比20%増の7860万㎡になると予測される。

本レポートは業界のすべてのFPD生産ライン (合計100以上) の生産能力、TFT基板投入量、稼働率を月次ベースで詳細に提示、データはピボットテーブル機能によってFPDメーカー、国、TFT世代、バックプレーン、フロントプレーン、基板タイプのセグメンテーション別に表示できるようになっている。稼働率については、Q1’19以降の実績データと2023年の最初3四半期分の月次予測データを提供する。

一つ目のグラフが示すように、2021年はパンデミックによる需要急増を受けて台湾と中国で生産ライン稼働率が特に好調だった。Q4’21に一旦減速後、Q1’22には生産ライン稼働率がグローバルで87%まで上昇したが、マクロ経済と地政学のショックによって需要は急落した。稼働率はQ2’22に6%低下し、Q3’22にはさらに15%低下して65%となり、2008年から2009年にかけての金融危機以来の最低水準を記録した。Q4’22には稼働率が67%へとわずかに回復し、Q1’23にはさらに70%まで回復した。最新の情報によると、稼働率はQ2’23に79%まで加速するが、Q3’23には78%へと徐々に下がる見通しである。

地域別 TFT生産ライン稼働率 (四半期推移)
Source: DSCC's Quarterly All Display Fab Utilization Report

グラフが示すように、景気減速は広範囲の全生産地域に及んでいるが、これまでのところ台湾と中国では回復が他地域より速くなっている。この減速はLCDだけでなくOLEDの生産にも影響が及んでいるが、その影響はOLEDラインのほうが深刻で長期化している。韓国はOLEDの生産能力シェアが著しく高く、その他の地域はいずれもLCDが優勢である。2022年にSDCのT8ラインとLGDのP5およびP7ラインが閉鎖され、2023年には韓国の生産能力の57%がOLED生産となっている一方、中国ではOLEDのシェアは6%にすぎず、その他すべての地域ではごくわずかなシェアとなっている。

LCDライン不振の要因は共通している。LCD価格の急落と在庫の蓄積である。LCD生産能力については、完全に置き換え可能というわけではないが大部分は代替可能であるため、ある世代サイズの能力不足を別の世代サイズで補うことができ、同様に、あるサイズの供給過剰が別のサイズに波及する。OLED生産能力については状況が異なる。OLED能力は4つのクラスに区別され、クラス間にはほとんど重複がない。

  • LGDの白色OLED能力については、第8.5世代ラインで酸化物TFTバックプレーン搭載OLEDをTVおよびモニター向けに生産している
  • SDCはQD-OLED能力については、同様に第8.5世代ラインで酸化物TFTバックプレーン搭載OLEDをTVおよびモニター向けに生産している
  • リジッドOLED能力については、大半がSDCだが、第5.5世代以下の小規模ラインでLTPSバックプレーン搭載OLEDがスマートフォン、タブレット、ノートPC向けに生産されている
  • フレキシブルOLED能力については、多くのサプライヤーが主に第6世代ラインでLPTSまたはLTPOバックプレーンを搭載したOLEDをスマートフォン向けに生産している

低迷の要因は能力クラスごとに異なるが、共通要因として一つ挙げられるのは、電子機器需要の減速である。電子機器向けではいずれも、2022年下半期に稼働率が70%を超えることはなかった。

LCDについてさらに詳しく、各月のメーカー別稼働率を見てみると、業界全体のLCD生産能力の90%を占めるLCDメーカー上位7社がいずれも、2022下半期に劇的な減速を示している。このグラフからは、すべてのメーカーが景気後退から回復しつつあるなか、他社よりも回復が早いメーカーもあることが読み取れる。

不振が最も深刻で回復が最も遅いメーカーはAUOとSharpである。AUOは原価以下の売上を競うのではなく、価格について立場を譲るくらいなら取引を拒否する決断を下したようだ。現在はTV用LCD価格が上昇しており、AUOも稼働率を引き上げることができている。AUOは4月下旬の決算発表で、出荷面積は前期比20%以上増が期待されるものの、価格は横ばいからわずかな上昇になるとの見通しを示した。

メーカー別 TFT LCD生産ライン稼働率 (月次推移)
Source: DSCC's Quarterly All Display Fab Utilization Report

AUO同様、Sharpも2022年下半期に稼働率が急落し、2023年に入っても回復は緩やかだ。Sharpの生産能力では、日本の堺市にあるオリジナルの第10世代ラインと中国の広州にある後発の第10.5世代ライン、2つの第10世代以上ラインが大半を占めている。堺ラインはQ3’22からQ1’23までの3四半期にわたりきわめて低い稼働率に苦戦、9ヵ月間の稼働率は30%未満だった。Sharpは11月の決算発表で堺のリストラ計画を示唆したが、その意図はまだ明らかにしていない。Sharpは2023年度通期 (2023年3月31日終了) 決算を5月9日に発表する。

景気低迷は大手LCDメーカーのみならず、中小規模のLCDメーカーにも被害を及ぼしている。CEC PandaはIT分野で競争していけなくなったため、南京にある第6世代a-Si LCDラインでの生産を停止した。Digitimesは、CEC Pandaが中国の小規模LCD メーカーであるInfovisionと第6世代ライン買収に向けた協議を開始したと報じたが、DSCCでは今のところ南京ラインの再開は予測していない。

Quarterly All Display Fab Utilization Report はレポート名が示すようにすべてのFPD技術とアプリケーションを対象としているが、DSCCでは別レポートである Quarterly OLED and Mobile/IT Fab Utilization Report についても最新版を先週発行しており、このレポートではOLEDおよびLTPS LCDに焦点を絞っている。次のグラフはリジッド基板およびフレキシブル基板搭載のLTPS LCDおよびOLEDの稼働率を示している。大型画面カテゴリではQ3’22からQ4’22で低迷が底を打ったのに対し、モバイルITセクターの低迷はQ1’23に底を打っている。スマートフォン向けリジッドOLEDの需要低迷により、リジッドOLEDの稼働率は低い状態が続いている。フレキシブルOLEDも、特に中国で生産能力過剰に悩まされており、LTPS LCDセクターはスマートフォン市場全体の減速に苦戦している。

FPD技術および基板別 TFT稼働率 (月次推移)
Source: DSCC's Quarterly All Display Fab Utilization Report

業界はここ10年以上で最悪の低迷に見舞われたものの、2023年上半期には回復し始めている。しかし、業界の生産能力は引き続きFPD需要を大きく上回っており、稼働率向上を目指す業界の動きによって今年下半期には需給バランスが供給過剰に陥るリスクがある。

DSCCの Quarterly All Display Fab Utilization Report は、業界のすべてのFPD生産ラインを対象に生産能力、TFT基板投入量、稼働率のデータを月次ベースで提供しており、データはピボットテーブル機能によってFPDメーカー、国、TFT世代、バックプレーン、フロントプレーン、基板タイプのセグメンテーション別に表示できるようになっています。稼働率については、Q1’19以降の実績データと2023年の最初3四半期分の月次予測データを提供しています。Quarterly All Display Fab Utilization Report の購読ご希望のお客様は お問い合わせ窓口 までご連絡ください。

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Written by

Bob O'Brien

bob.obrien@displaysupplychain.com