TV用LCD価格 (6月度分析)
この記事は6月5日付 (米国時間) のグローバルブログ Springtime Rally in LCD TV Panel Prices Will Stall in the Summer をDSCC Japanのスタッフが全文和訳したものです (6月8日 15:00版)。
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春分に始まったTV用LCD価格の堅調な上昇は、LCDメーカーが第2四半期に供給を増やしたため、夏至には終わりそうだ。TV用LCDの過剰在庫はQ3’22からQ1’23の3四半期の稼働率が低かったため枯渇したが、現在の生産ライン稼働率は経済が低迷している今の世界需要を満たすには十分以上だ。価格上昇は6月に終わり、Q3’23には価格が安定すると予測される。
一つ目のグラフは2023年9月までのTV用LCD価格動向の最新予測である。パンデミック後の2021年中盤から2022年夏にかけて価格が急落したことがグラフに表れている。価格は2022年9月に過去最低値を記録し、Q4’22からQ1’23にかけて緩やかに上昇した後、2023年4月に大幅な上昇を示し始めた。5月には実際の価格が当社の予測を上回ったため、5月と6月の価格は先月の予測から上方修正となっている。
業界が深い穴から這い上がり始めたことで平均価格はQ1’23に前期比2.9%上昇、第2四半期には平均14.3%の上昇となっている。
第2四半期には全サイズのTV用LCD価格が上昇しているが、なかでも65インチが最大の上昇を示している。大型サイズのLCDは4月に前月比11%上昇、5月には前月比9%上昇となり、6月にはさらに4%上昇 すると予測されている。他のサイズの価格上昇率は4月に2~8%、5月には3~8%の範囲だった。6月には価格上昇が減速、平均価格は前月比3.4%上昇にとどまると予測される。3月から6月にかけての価格上昇率は8~26%の範囲になると見られている。
面積ベースの価格に目を向けると、価格帯が正常化していることがわかる。2022年8月から2023年3月までは65インチTV用LCD価格が面積ベースで最も低かったが、ここ数ヵ月の上昇によって65インチが主流になっている。2023年6月時点で65インチ以下LCDの面積ベース価格は1平方メートルあたり118~144ドルの範囲となる。
最大の画面サイズである75インチと85インチの価格については、それ以下のサイズとの価格差は1年前に比べて下がっているものの、依然として割高になっている。2022年6月には75インチが1平方メートルあたり157ドルで比較基準となる32インチに対し52%高、85インチは1平方メートルあたり178ドルで32インチに対し73%高の販売価格だった。2023年6月現在、75インチは32インチより23%高い1平方メートルあたり148ドル、85インチは31%高い1平方メートルあたり157ドルで販売されている。
最後のグラフは2015年から2023年9月までの長期的視点で見たDSCCのTV用LCD価格指数を示している。2023年6月に予想される価格上昇により、指数は2022年9月の最低値30.5と比べ39.9まで上昇すると予測される。5月の予想以上の価格上昇によって指数は2021年9月以来初めて前年比プラスの領域に到達、Q3’22が価格急落の最終段階だったことから、第3四半期も価格は横ばいだが前年比の値は上昇を続ける。
Q2’23の価格上昇は間違いなくFPDメーカーにとっては歓迎すべき救いの手であり、収益率の改善を可能にするものだった。しかし、業界の生産能力は近い将来に見込まれる需要をまだはるかに上回っている。したがって、業界が稼働率を引き上げても、また価格下落が起こるリスクは依然として存在する。第3四半期に入ればFPDの需給バランスが整い、下半期には価格が安定すると考えられるが、需要あるいは供給の変化によってバランスが変化し、再び価格下落が起こる可能性もある。