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FOR IMMEDIATE RELEASE: 02/03/2023
伸び盛りの車載用有機EL
DSCC アジア代表・田村喜男DSCC Japan (東京) -
第60回 DSCC田村のFPD直球解説 (電子デバイス産業新聞) ※一部文面更新
厳しい市況が続くFPD市場だが、車載パネルは2023年も成長が続く。23年の総出荷(液晶+有機EL)は2億枚を超える見通しで、自動車1台あたりパネル2枚以上を搭載する計算になる。電装化率の向上に伴い、今後も右肩上がりが続くはずだ。
そのなかで有機ELの出荷枚数は、主流の液晶(アモルファスシリコンやLTPS)に比べてまだまだ少量だが、超フラッグシップのハイエンド用途へ徐々に浸透しつつある。液晶に比べて信頼性、輝度、寿命が課題といわれてきたが、フレキシブル対応やタンデム(発光層の2層化)といった技術で克服。12~14インチでは、液晶に対してリジッド型が2倍以上、フレキシブル型はさらに倍ときわめて高価だが、用途を拡大してきている。
車載用有機EL市場は現在、韓国のLGディスプレー(LGD)とサムスンディスプレー(SDC)が寡占しており、JOLEDがインクジェット成膜の有機ELで参入してきた段階にある。LGDはフレキシブル型のタンデム、SDCとJOLEDはリジッド型を提供。デザインを重視する欧州の自動車メーカーが好んで搭載しており、この流れに韓国や中国の自動車メーカーが追随している。
LGDは現在のところ唯一、タンデムタイプの量産出荷実績があり、ここではSDCに先行している。フレキシブル型タンデムに続き、今後はリジッドのタンデムを薄膜封止したハイブリッド型の生産も増やしていく。このハイブリッド型は、アップルがiPadなどIT用に採用予定の有機ELと同じ構造だ。
SDCは当初、車載用の量産には消極的だったが、リジッド専用であるA2ラインの「脱スマホによる稼働率向上」を目的として、ノートPC、ゲーム機用に続いて量産を増やしつつある。CES2023では、34インチと15.6インチを組み合わせたデジタルコックピットを展示するなど積極姿勢に転じており、今後はどのタイミングでフレキシブル型やタンデムタイプの量産出荷に踏み切るかが注目される。
中国勢の車載用有機ELとしては、2022年上半期からBOEがBYD向けにフレキシブル型の供給を開始した。スマホと同様に「中国の自動車には中国製有機ELを搭載する」流れが早晩出てくることが確実視される。さらにBOEは2022年末よりフレキシブル型15インチの供給をLixiang向けにも始めている。
有機ELに対抗する液晶勢は、ベゼルレスが可能で省エネなLTPSに続き、ミニLEDバックライトの採用を進める。2023年には主に台湾製パネルによる複数の搭載実績が出てくる見通しで、有機ELと同様にフラッグシップのハイエンド用に立ち上がってくる。また、この次として、マイクロLEDがどう進化していくかが、AUOやイノラックスといった台湾勢の今後の命運を左右する。
(DSCCアジア代表 田村喜男)
※本記事中の企業名・用語などは電子デバイス産業新聞様の掲載基準に沿っています(大文字表記など)。
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