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FOR IMMEDIATE RELEASE: 10/11/2023


スマートフォン用OLEDに価格反転の兆し
DSCC アジア代表・田村喜男

DSCC Japan (東京) -

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第67回 DSCC田村喜男のFPD直球解説 (電子デバイス産業新聞)

スマートフォン (スマホ) 市場の低迷で価格下落が続いてきたフレキシブル有機ELに、ようやく反転の兆しが出てきた。下がりきった末の「若干の値戻し」と言え、パネル各社の黒字転換には当分至らないが、拡大する一方だった赤字幅を小さくすることには寄与しそうだ。

2022年、中国のフレキシブル有機ELメーカーは低価格戦略を加速させた。この戦略は、業界トップの韓国Samsung Display (SDC) からシェアを奪うのが目的であり、価格を下げた分は工場稼働率を高めて補うというという腹積もりであった。

だが、想定以上のスマホの販売不振とパネルの供給過剰によって、この目論見は大きく外れた。グラフはスマホ用フレキシブル有機ELの平均価格を示したものだが、中国スマホブランドへの販売価格は2020年以降下がり続け、値下げ要求に応じ続けてきた結果、足元では20ドル台という水準に達した。言うまでもなく、この水準では全パネルメーカーが赤字の状態である。

グラフはあくまで平均販売価格を示しているが、中国パネルメーカーが中国スマホブランドに販売するケースの最安値は「10ドル台後半」という事例が複数伝わっている。これは部品コストと人件費に値する限界費用レベルという困難な水準。加えて、世界スマホ市場で50%程度の台数シェアを持つOPPO、Vivo、Xiaomi、Honorといった中国スマホブランドの価格交渉力の高さをまざまざと見せつけたとも言える。

また、パネルメーカー自身も、中国ローカルメーカーの発光材料を採用するなどして、コスト削減に積極的に取り組んできた側面があることは否めない。発光材料の50%近くをローカルから調達しているケースもあり、HyperionsやShaanxi Lighte Optoelectronics Materialといった材料メーカーが販売を伸ばしている。

一方で、供給過剰に伴う投げ売り状態は、ついにフレキシブル有機ELでもホワイトボックス (ノンブランドやリペア向け) 市場が形成されるという事態も招いている。値下げを受け入れざるを得なかった一部のパネルメーカーはキャッシュが回らない状況にまで追い込まれ、創業以来の大赤字といわれる深刻な業績悪化から抜け出せないでいる。

こうした状況を改善するため、BOEが7月から中国スマホブランド各社に値上げを通知し始めた。Tianma Microelectronicsも高稼働戦略を諦めてこれに追随し、Visionoxも主要顧客と値上げ交渉を始めた。5-10%の値上げを求めており、これの結果、10-12月期に最安値のところで若干の値戻しが行われる見通しとなっている。

ただし、黒字転換に向けた抜本的な価格反転までには至らない。この状態が長く続くようなら、中国パネルメーカーの再編劇を誘発してしまうかもしれず、一刻も早く業績改善に道筋をつけたいところだ。


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