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FOR IMMEDIATE RELEASE: 11/12/2024
2035年までのLCD需給バランス展望~11/20セミナーのポイント解説 (4)
DSCC アジア代表・田村喜男DSCC Japan (東京) -
11/20セミナーのポイント解説 (4)~「FPD市場総論」から
中国FPDメーカーの旺盛な事業拡大に伴い、大型LCDパネルの大半が中国で生産されるようになった。直近では、シャープが堺G10工場 (SDP) の稼働を停止した一方、韓国LG Displayの広州G8.5 LCD工場におけるChina Starの買収交渉が決着し、2025年4月からTCL CSOTに譲渡されることが決定した。このようなChina Starの能力拡大に対応して、BOEがB19工場の増産を決定するなど、上位メーカー間でのシェア争いの動きも見られる。
さて、BOE、China Star、HKCといった中国FPD大手メーカーがテレビ用LCDパネルの供給を寡占することとなり、景気の波こそあるものの、半導体メモリー市場と同様に、中国LCD大手のさじ加減によってテレビ用LCDパネルの価格が安定化し、一定の利益を確保できる環境が整ってきた。事実、テレビ用LCDパネルは55型の営業利益ベースで、4-6月期で12%、7-9月期で10%、10-12月期でも7%の利益が予想されており、価格下落局面でも利益を得られるようになった。つまり、テレビ用LCDパネルはIT用などの他用途と比較しても「儲かるデバイス」に変わってきているのだ。
中国では補助金の獲得が年々難しくなってきており、IT用フレキシブルOLEDやLTPOの量産化といった新技術の実用化を念頭に置かないと、補助金を獲得できない。また、LCDの新工場規模の投資に補助金は支払われないため、当面のLCD増産は既存工場での生産能力増強、というスタンスになる。このような環境下では、いずれは工場稼働率も9割近くを維持できるようになり、パネル各社は無理に大型化する必要も、キャパ増の必要もなくなる。加えて、また、今後はインドがテレビ用LCDの新工場を立ち上げて参入してくる可能性があるが、影響は当面大きくはなく、インド企業がまだ投資に逡巡している姿勢すら見受けられ、投資計画が遅れており、2028年から量産開始見通しである。
では、こうした状況下で新規設備投資の芽は出てくるのか。DSCCでは、FPD生産面積の7割以上を占めるテレビ用パネルからポジティブとネガティブのシナリオを考察してみた。
テレビ用パネルの平均サイズは、2023年時点で49インチ、24年には50インチに達する見込みだ。これをベースとして、平均サイズが55インチまで大型化が続き、テレビの出荷台数も緩やかに伸びていくとポジティブに予想した場合、面積需要の年平均伸び率は、25~28年が4.4%、29-35年が1.5%と推定される。これは現在浮上している投資計画に加えて、月産14万枚のG8.7工場がさらに5つ分必要になる計算になる (現実的には、既存ラインの拡張や増強投資体制で臨むことになる)。
逆に、2027年で大型化が52インチで止まり、テレビの出荷もこれ以上伸びないとネガティブに予想した場合、面積需要の年平均伸び率は2025-28年が3%台、29-35年が1%以下にとどまり、現在見えている投資計画だけでキャパはぎりぎり間に合う。
これまでのFPD業界はパネルメーカー自らが大型化とキャパ増で市場を拡大してきたが、不動産不況などで中国経済は不振が続いており、不透明感が強い。どちらのシナリオに近い方へ動いていくのか、今後も引き続き注視が必要だ。
11月20日 (水) に東京コンファレンスセンター・品川で当社が主催する「FPD産業分析セミナー 2024年後期版」における「FPD市場総論」枠において、これを詳しく解説する。
(10月付の電子デバイス産業新聞向けコラム原稿を、11月12日に筆者が大幅改訂したものです)
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